ざつがみのウラ。

長文書きたいと思った時に書き殴れる、そんな場所。。

ブラックダイスA公演を主にキャラについて語る。

frying trip第12回公演「ブラックダイス」の公演から1ヶ月が経ちました。

思い出はだんだん薄れてしまうので。
記録として今の思いを残しておこうと思います。
1ヶ月も経って薄れるも何も、って感じですが。そこは色々考える時間も有ったという事でプラマイゼロにしてください。。

※芽生だと二人いて紛らわしいので“咲子”と“お嬢さん”で表記統一します。
※※私が観劇したのはAキャスト5回のみなのでご了承ください。
つまり咲子はAキャストを観ての感想です。

◆全体を通して。

面白かったです。とても面白かった。
冒頭の重苦しい始まり方で「どうなってしまうの」と思っていたのも束の間、すぐにナイトクラブ「ブルジョーネ」で繰り広げられる軽妙なトークで笑う笑う。
裏カジノに関する各々の思惑が交錯する中、少しずつ成長していく咲子を微笑ましく思ったり、アホをやらかす面々にやっぱり笑ったり。
そして裏カジノパート。底抜けに運が悪いのを逆に利用するのは王道という感じでやはり、といった印象でしたが詐欺師ならではの発想で好きです。
その上で、最後には気持ちの在り方で負の効果から正の効果に変わるというオチが用意されていて素直に感心しました。
で、カジノパート後のエピローグですが。
毎回毎回泣いちゃうんだな、これが。
社長の真意も、古田の本音も、黒川の痩せ我慢も、咲子と社長の和解も、ブルジョーネの皆の団結も、咲子の決意も。
もうなんでこんなに泣いてばかりなのってくらいに。

もう本当にね、笑いあり涙ありで前向きになれる優しい舞台でした。
登場人物ほぼ全員、悪い奴だったりしても憎めない奴ばかりなんですよね。約一名、鶴岡って人は礼儀知らずの敗残兵でしたが(鶴岡も嫌いな訳じゃないので悪しからず)。
だから何回観ても楽しめるし、何回観ても感動して泣いてしまう、そう思います。

◆キャラ語りの前置き

ここからキャラ愛という名の無駄に長い文を垂れ流しております。
今回はあくまでキャラに重点を置いて、演技や演者の方々には極力触れずに書きました。
理由としては――私がAキャスト咲子である伊波さんのファンなので…自重しないと彼女をベタ褒めして終わりそうで……。。
できるだけ公平に作品を評価したかったので、そういうスタンスで書かせてもらいました。
一つだけ言いたいのは演者の皆さんは舞台上でとても輝いてましたし、確実に役に命を吹き込んでました。本当に素晴らしかったです。

◆咲子

咲子ってネガティブ思考だけど意外と最初から芯が強いんですよね。
詐欺師チームに対して割と強気だったり、嫌な事は嫌と全力で主張したり。お嬢さんとも本気で口喧嘩したり。
八代さんが「信用できるのはちゃんと一人で考えてる奴だ」と彼女に上機嫌で話す所見ても最初から自分の意志はハッキリ持ってる子なんだなって。
その意志の強さが「父に捨てられた貧乏な育ち」という境遇でマイナス方向に発揮されていて不運が続いていたのかなと。
成沢血統の強運補正は意志の力で発揮するのだろうし、全てを受け入れ前に進み出した咲子の今後は順風満帆なんじゃないかな。例えるなら前作主人公の余裕の風格を纏ってるような、そんな感じ。
…でも咲子には泥臭く足搔きつつ幸せをもぎ取る姿が似合う気がして困る。。

もう一つ、正体バレの場面で「本当にお金の為なの?」の問いに「…はい」と答える所。
凄く辛そうで、観てる方も辛いよなと思ってしまうけど―本当にお金の為だったんですよね。
それなのに辛そうなのはやっぱり咲子にとってブルジョーネでの日々はかけがえない物であり、その仲間達に恨まれ、また、彼らを傷付けてしまうのが辛かったんだろうな、と。
でも嘘をついて許されるのは良しとしない意志の強い所、後述の黒川さんもそうだけど魅力的です。

と、色々想う所はあるですけど、究極的には。
「お母さん、どうしてかな――今年の桜、綺麗ですっ……!」
この一言に尽きます。
5回聴いて5回泣いた。千穐楽が一番泣いた。それがすべて。
未来に期待できなかった咲子が来年の桜を楽しみになれるようになった。この作品はその過程を描いてる一つの物語で。だから観客は心から彼女の成長を祝福し涙する。
今はただ、優しく可憐な花となった彼女が愛おしい。

◆黒川

黒川さん大好きです。
基本何やらせてもプロフェッショナルだけどその実誰より感情表現が豊かで、人間臭い男。
ツイッターでも呟いたけど、3回目観てる辺りから「黒川は咲子同様父親に捨てられた境遇」なのかな、と思ってました。
だから何度もそのワードで咲子を煽るし、無意識にシンパシーが有ってそれ故自分のように完璧じゃない咲子にキツく当たったり。
一方的で父親の愛を一身に受けてるお嬢さんには憎悪や羨望に近い気持ちがありつつ、自分には無い純真さに気付かぬ内に惹かれていた。
だからこれ以上彼女を傷付けない為に何も言わずに姿を消す。自分自身は彼女の事を未だ忘れられぬまま。
…格好悪いけど格好良すぎやしませんかね。
咲子がお嬢さんに向けた「忘れるのよ、あんな奴の事。黒川にとっては貴方に忘れられる事が一番辛いこと」って台詞が染みるんですよ。
「違うんだよ、違わないけど違うんだよ」って。
黒川は本当は忘れて欲しくない、でも忘れられる事を望んでいる。彼女を想う黒川にとっては一番幸せな行為であり、でもやっぱり彼自身には一番辛い行為であるから。

台本からカットされた台詞、舞台で行われた物が全てであり完成した黒川にはそんな要素は無いのかもしれない。でもボクはやっぱり。
『桜が咲く季節になるたび、思い出しちゃうかもしれません。あの子の事を』
と、心の中で想い続けていたのだと信じたいです。

◆お嬢さん

お嬢さんは咲子の「有ったかもしれない姿」ですよね。誤解を恐れず言うなら咲子の置かれている絶望を後押しする為のキャラ。でもそれだけで終わらせず、彼女にも一つのストーリーを用意してるからこそ素晴らしい。
望めば何でも手に入ったし、何でも叶った。そんな彼女が初めて欺され、欲した物が手に入らなかった。だけどその挫折で己や周りを省みる事ができた。
自分が好きと思う人にだけ優しい、から自分を想ってくれる人にも優しくできるようになった彼女は、作中で一番成長したように思えます。

◆古田

古田さんって実は強い人間だと思うんです。
人間誰もが多かれ少なかれ「人任せで楽したい」気持ちを持っているはず。だから彼のスタンスは共感できてしまう。
でも彼は「楽したい」想いを弱さだと自覚してた。後はキッカケだけだったんですよね。そんな自分を客観視できてる古田さんは強いなって。

その上で最後はしっかり成長してる訳ですが、改めてメイン四人を対比すると面白い。
咲子→愛情を知って成長した
お嬢さん→経験をして成長した
古田→覚悟を決めて成長した
黒川→変われずに立ち去る
皆足りない物を手に入れて変われた一方で黒川だけは変われていないんだなあって。
彼に足りない物は『正直に生きる事』ですね(笑)。詐欺師だからって自分の心まで偽らないで素直に生きちゃいなよ!
…何故か黒川さんの話になっている。
話を戻すと古田さんは一番私達に近い存在なのかなと。だからこそ共感で終わらず、彼のように変わらなきゃいけない。咲子とは違う形で前に進む事を示してくれてるキャラですね。

◆成沢社長

初回と二回目以降で見え方が180°違う、複数回観劇の際に一番楽しめるであろう人。
初回は「叩きのめすしか無いね!1億5千万掻っ攫ったれ!」って印象なのに、二回目以降は「あーもうパパ不器用なんだから!」ってなってしまう。
多分由美子さん(咲子母)と「子供ができたら女の子なら芽生」って話をしてたんですよね。
だから咲子は“芽生”だし、社長もそれが忘れられずにお嬢さんも“芽生”で。
極め付けはブルジョーネ(bourgeonne)はフランス語で『芽生え』って事ですよ。この人はどれだけこの言葉を守り続けてきたんだ、もう許すしかないでしょう。

古田さんとの一件も好きです。長年の付き合いがあってこそだけど、それでも実力主義の社長が店を任せられると判断してるんだからやっぱり古田さんの実力を評価してたんだなと。そして店長の座をサプライズプレゼントしてあげようと企んでたと思うともう社長が可愛くてしょうがない。

◆赤木

最後まで余裕を崩さなかった作中一番強そうな人。ポーカーフェイスかもしれないけどどちらにせよ鋼のメンタルの持ち主。咲子が裏切ってたと知っても割と平然してたり、とにかく心が強い。
赤木さんは底が見えない謎の多さが良いキャラ付けになってましたね。完成形詐欺師って感じで、彼と比較すると黒川は感情に動かされやすくて――まだ、詐欺師から足を洗えそうに思えるんだよなぁ。
赤木さんも黒川とのラストシーン、台本の台詞が変わってましたが台本の「お似合いだっただろうな」ってのは野暮過ぎて彼には似合わない気がして、公演での「違う道もあっただろうな」位の台詞は改めてしっくり来ました。
ここの改変を知る事で「そうだよね、赤木さんってそういう人だよね」って人物像をより補強できて良かったです。

◆坂本

なんかこの人ズルいと思うんです。
だって劇中の笑えるパートに大抵絡んでるじゃないですか。
古田・黒川の取り違えを筆頭に、「私も」とか鍵落としとか「ヤバい、査定されますよ」とか「そーかなー!?」とか山崎羽交い締めとか「競馬新聞じゃねぇか!」とか。
もう坂本=出てくれば笑わせてくれる人って図式が成立しちゃいますよね。
それだけにシリアスに転じた時の破壊力が一層強い。
「私は古田社長に付いていきます」の一言、直後の橘の「私もだ」に食われがちだけど、それまで意思決定の場では同意ばかりだった坂本が率先して声あげてんですよ。こんな事されたら泣いちゃうでしょう。
個人的な話ですが私、普段ヘタレっぽい人がここ一番で覚醒する展開大好きなんですよ。だから全部引っくるめて坂本のことが大好きです。

◆ブルジョーネ組

桐谷さんは生真面目だけど裏カジノを容認したり黒川を怪しんだり、頭は柔らかい印象ですが…殆どギャグパートに加われず割を食ってしまった印象があります。敏腕な彼が居ることでブルジョーネは締まってたと思うので必要不可欠な存在なのですが…坂本がズルいんだな、うん。
橘はやっぱり「立派な父親です!」の一言が忘れられない。この一言で彼が成沢社長を心から慕っている事が伝ってきたし、人を良く見てる橘に慕われてる社長もただ横暴な人でない事がわかる。短いシーンに詰まった人間関係描写がとても好きです。
しずくさんは咲子との微妙な距離感が印象的。昔の自分を重ねつつ、自分に正直に生きる咲子と嘘を使いこなす自分との違いを自覚してた、そんな感じ。でも彼女の事可愛がってたんだなって思えるエピローグのやり取りも好きです。
愛ちゃんはとにかく笑いを振りまいてくれた癒し系でした。個人的にお嬢さんとの凸凹コンビっぷりが大好きです。多分この二人良い感じの友達になれると思う。お嬢さんは「追い出してあげる」発言の意図を考えるに愛の事気に入ってそうだし。

◆ブルジョーネの客

山崎とかいう笑いの神。出てくる度に笑いの強度が増していて敵わない。羽交い締め退場のシーンはもはや卑怯。エピローグでも出番が有って、もはや彼もブルジョーネの一部なのかもしれない。
鶴岡とかいうかませ犬。彼だけフォローが無いのがちょっと気になるような、中途半端に有るくらいならこのままで良いような。カジノ参加者の引き立て役としてこれ以上ない位活躍してるので良いキャラだと思います。
八代さんとかいう凄く良い人。味方が誰もいない咲子に初めて現れた理解者だから、観客もそりゃ彼に好印象持ちますよね。「髪だって…丁度切りたいと思ってた所だ」とか咲子と飲んでる際の「これ内緒ね」ポーズとか、意外とお茶目な所も魅力。地味に負け越してるので是非幸せになって欲しい。

◆お嬢さん組

西村さんは正直者は報われるを地で行ってて見ていて安心しました。でも「10年やってんだからいつまで新人気分でいるのよ」ってお嬢さんのツッコミも割と正論だと思う。これからもお嬢さんと組む事で一流カメラマンになれると良いですね。ちなみに金欠訂正ネタは最初の「サイゼリヤコスパが違うよ!」が一番ツボでした。
モデル仲間二人はお嬢さんとの絡みで、観ていて嫌な感じにならない具合でお嬢さんのわがままさを引き出してた印象です。割と二人ともあっけらかんとしていて、振り回されても気にしてない感じがお嬢さんへのヘイトを必要以上に溜めさせずに良い塩梅でした。黒川との恋を素直に応援してたり、観ていて微笑ましいポジションでしたね。

◆終わりに。

えー、ここまで取り留めなく好き勝手書いてすみませんでした。。
なお、細かい台詞回しを確認する為台本を見返しましたが舞台上でのやり取りが脳内再生されて一人懐かしんでおりました。DVD待ち遠しい。
きっと来年の桜が咲く頃にこの文章見返したら恥ずかしくて身悶えするんだろうなと思いつつ、それもまた一興かと開き直って締めたいと思います。